『大江健三郎全小説1』(Oe Kenzaburo Zenshosetsu 1 /Oe Kenzaburo Bütün Romanları 1), , Editör, Kodansha, Tokyo, ss.645-664, 2018
大江文学の「世界化」には、「小説の方法」を重視する一方で、他方ではつねに「世界文学」を見据え、その作用にひたすら身を曝すという大江健三郎の作家意識の影響が大きかった。『われらの時代』(1959)は文字通りそのような作品なのである。しかし、不思議なことに、この最初の書下ろし長編は、大江の他の主要な作品である『個人的な体験』(1964)や『万延元年のフットボール』(1967)のように多くの外国語に翻訳されておらず、海外では広く読まれているわけではないにもかかわらず、大江文学の「世界化」の過程に貢献した作品である。